Visual Basic 6.0 入門講座 |
第5回 おそるべきIDE
今回はVB(Visual Basic)のIDE(統合開発環境)の話です。「IDE(統合開発環境)」とはプログラムを助けてくれるいろいろな機能や環境を指します。VBはこのIDEについては特に優れているといわれています。VBのIDEのすべてを説明することは到底できませんので、ここでは特に目に付く3つの機能を説明するにとどめます。
1.大文字化
プログラミングは実行するまではそのプログラムがちゃんと動くかわからない気がします。たとえば、画面に「こんにちは」と表示させようと思ってコマンドボタンを1つはりつけてから、ダブルクリックして次のように書いたとします。
Private Sub Command1_Click() MagBox "こんにちは" 'この行は間違いです。MsgBoxをMagBoxと書き違えています。 End Sub |
■リスト1
この3行のうち、1行目と3行目はコマンドボタンをダブルクリックした時点で自動的に生成されますから、自分で書く必要があるのは2行目だけです。けれど実はこの2行目がまちがっています。本来はMsgBoxと書くところをMagBoxと書いてしまっているのです。これでは実行してみてもちゃんと動くわけがありません。
このプログラムの場合は自分で書いたのは1行だけですから上手くいかなかったとしてもやがて原因に気がつくことでしょう。しかし、100行以上もあるプログラムを書いたとしたらどうでしょうか?その100行のうちどこかに間違いがあるとしても気づくのには時間がかかるかもしれません。
この手の「書き間違い」に関して言えば、もしあなたがプログラムをしているとき、そのとなりでVBに詳しい人が見ていてくれれば打ち込んだとたんに「あっ!そこちがうよ!」と教えてくれることでしょう。
実はVBにはこの機能があるのです。VBのIDEは正しいキーワードを打ち込むと先頭を大文字にしてくれます。
たとえば、小文字で
msgbox "こんにちは"
と打ってから行を変える(Enterキーを押すか、矢印の上や下を押すなど)と自動的に、
MsgBox "こんにちは"
というように先頭を大文字に変えてくれます。(キーワードによっては先頭以外の場所が大文字になるものもあります)。
だから、行を変えたのに小文字のままだったらそれはVBのIDEが「あっ!そこちがうよ!」と教えてくれているということなのです。
なお、はじめから大文字と小文字を自分で打っていたらこの機能が働かないのでプログラムするときはすべて小文字で入力することをお勧めします。大文字と小文字はShiftキーを押しながらCapsLockキーを押すと切り替えられます 。
2.インテリセンス
今度はインテリセンスと呼ばれる機能を紹介しましょう。これは「入力補完」と考えるといいと思います。
たとえば、次のような1行を打ち込むとしましょう。
Command1.Refresh
みなさんも実際にコマンドボタンを1つ貼り付けてどこかのイベントプロシージャに書いてみてください。キーボードから Command1. のように「 .」まで打つとなにやら一覧が出てくるのが分かりますね。
■画像1:インテリセンス機能により入力候補が表示されている
これがインテリセンスと呼ばれる機能です。この一覧はCommand1に対して有効な命令(メソッド)や設定(プロパティ)の一覧なのです。もちろん、これから打とうとする Refresh もこの一覧の下のほうに表示されているはずです。
こういう風に、入力するキーワードが一覧で表示されるのですから本当に便利です。しかも、この一覧はちゃんと場合に応じて変わってくれますから、この一覧の中から選んで入力している限りタイプミスということはありえません。
この一覧から Refresh を選ぶには、マウスで下のほうにスクロールさせて Refresh をクリックしてもいいですが、なれてくると面倒です。簡単なのは r と入力してから TABキー(Tab) を押す方法です。r と入力すると自動的に一覧のrから始まる項目にカーソルが位置付けされます。そして、選択されている項目を入力するにはTABを押せばよいというわけです。
せっかくですから、少し発展的な話も紹介しておきます。上の画像ではAppearance, BackColorなどがずらっとならんでいますが、それぞれのキーワードの先頭に手で紙を持っているようなアイコンがついています。このアイコンは、そのキーワードが「プロパティ」であることを示しています。プロパティとは簡単に言うと「設定」や「特性」といった意味で、たとえばBackColorプロパティ( 読み方:BackColor = バックカラー)は「背景の色の設定」のことです。他にもこの画像には登場しませんがいくつかのこういった種類のアイコンがあります。別にこれらのアイコンの意味を覚える必要はそれほどないのですがこの機会に一応まとめておきます。
アイコン | 意味しているもの | 説明 |
クラス | コマンドボタンやフォームなど、機能を備えた「物」。 | |
データ型 | 「文字」とか「数字」、「日付」とかのような区別 | |
列挙型 | (そのうち解説します) | |
イベント | (入門講座第4回を見てください。) | |
ライブラリ(?) | (そのうち解説するかもしれません) | |
メソッド | 命令。たとえば、Clsは「グラフィックを消せ」という命令。 | |
モジュール | いくつかの機能を一つにまとめたもの。 | |
プロパティ | 設定。特性。 | |
型 | (そのうち解説します) |
■表1
読んでも全然分からないと思います。自分でもなんと説明したものか困りました。どれも1行で説明できるようなものではないのでここに書いてある説明はちょっと無理やりな感じです。そのうちこれらを具体的に取り上げることもあると思いますので今は「フーン」といった程度に眺(なが)めておいてください。
これらのアイコンはインテリセンス以外の場所でも何かと見かけるのでそのうち自然に意味がわかってくることでしょう。だいたい一番良く見かけるのはプロパティですね。
3.パラメータヒント
今回最後に紹介するのは「パラメータヒント」です。実はこれは「クイックヒント」というのかもしれませんが本当のところなんと呼ぶのか良く分かりません。ここでは統一して「パラメータヒント」と呼ぶことにします。
■画像2:パラメータヒント
この画像はパラメータヒントが出現している画像です。なにやら四角の中にLen(Expression)と書いてあるのがあるでしょう。この四角がパラメータヒントです。
パラメータヒントは 開きカッコを入力したときやスペースを入力したときに自動的に出現して、その後に何を入力したらよいかを教えてくれます。上の画像は len( と入力したときに出現するパラメータヒントを捕らえたものです。「このあとにExpressionを入力してカッコを閉じればいいんだよ」と教えてくれているのですが、そもそもExpressionってなんだろうという人が大部分でしょう。先に言うとこれは文字列のことです。
このように、パラメータヒントはとても便利なのですがヒントの意味がわからないということはよくあります。これは慣れるしか仕方ないのでパラメータヒントが出たら注意してみてみてください。
ところで、パラメータヒントにはもうひとつ面白い役割があります。「パラメータヒントが出るはずのところでパラメータヒントが出ないようならプログラムのどこかを間違っていることがわかる」ということです。だいたいはスペルミス(文字のうち間違い)の場合にこういったことがおこります。インテリセンスでも同様のことが言えます。
4.まとめ
以上、3つの機能を紹介しました。これらの機能はプログラマーのためのプログラム支援機能であって完成したアプリケーションを使うユーザーには関係ないものです。初心者の方はこういったものを気にしない方が時々いらっしゃいますがどれも大切な機能です。こういう環境になれてしまうと、VB以外のプログラム言語を使ったときに「あれ、インテリセンスが出ない・・・。」とか「大文字にならないのこれ?」とか実に不便に感じるものです。
私の記憶によるとこれらの機能を最初に実装したのは他ならぬVBです。(もしかしたら記憶違いかもしれませんが・・・)。今ではVB以外でもVC#, VJ#, VC(Visual C++)、VID(Visual InterDev)、VJ(Visual J++)などMicrosoft社の開発ツールにはこれらの機能が搭載されています。他の社の製品でもこれらの機能を搭載しているものが増えていることから言ってこの機能はいまや万人に「必要だ」と思われているのでしょう。